皆さんこんにちは!
ワンニャンキャブの更新担当の中西です!
さて今回は
~猫のお引越しのポイント~
猫の移動は「箱に入れて運ぶ」だけでは成り立ちません。“慣らし(行動学)・安全(物理)・健康(獣医)・手続き(法令)”を同時に回すのがコツ。ここでは自家用車/鉄道・航空の手荷物/航空貨物まで、現場で使える深いポイントを体系化します。
1|猫輸送の本質:データで考える“ストレス管理”
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猫は“環境の変化”が最大ストレス:見知らぬ音・匂い・振動・温度差が生理に影響し、嘔吐・下痢・食欲不振・尿閉を招くことも。
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輸送品質=研究や暮らしの再現性:到着後に体調を崩せば、引っ越し適応や繁殖・医療スケジュールに波及。
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原則:①準備でストレスを削る ②輸送中は可視化する ③到着後の回復を設計。
2|タイムライン(国内移動の標準)
3〜4週間前:計画と“クレート好き化”を開始
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健康チェック(既往症・高齢・短頭傾向のある猫〈ペルシャ等〉は個別計画)。
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クレート訓練:
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W1:扉を開けっぱなしで常設。中で給餌・おやつ→“箱=安全基地”に条件づけ。
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W2:扉を一瞬閉める→数分まで延長。中で咀嚼できるご褒美を。
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W3:家の中で持ち運び→短距離ドライブで振動・音に馴化。
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W4:本番ルートの一部を試走(時間帯・混雑の確認)。
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輸送モード選定:直行優先・朝夕の気温穏やかな便/時間帯を予約。
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書類:ワクチン・マイクロチップ情報の更新(国際は別章参照)。
48〜72時間前:最終準備
当日
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食餌:嘔吐防止で満腹は避ける(4〜6時間前を目安/獣医指示優先)。
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運動と排泄:出発直前に静かにトイレ誘導。
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匂いの安心:自宅のブランケット・飼い主のTシャツ等をクレートに。
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時間厳守:早め行動でトラブル対応のバッファを確保。
3|“良いクレート”の条件(最重要)
サイズ・構造
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姿勢の三要件:中で立つ・向きを変える・伏せるが無理なくできる。耳先が天井に当たらない高さ。
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素材:堅牢なハードタイプ推奨。金属製ドア+ボルト固定でこじ開け防止。
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通気と遮光:四面通気+正面は視界確保、側面には**部分遮光(タオル等)**で落ち着かせる。
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床:滑りにくいマット+吸水力の高いペットシーツ二重。嘔吐・排尿時に身体が濡れ続けない構成。
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給水:こぼれやすいノズル式は避け、固定皿/給水ジェルを採用。
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ラベル:猫名・特徴・飼い主連絡先・「LIVE ANIMAL」・上下矢印・特記事項(投薬・性格)。
測り方の目安
4|モード別オペレーション
自家用車
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固定:クレートをシートベルトで確実に固定。助手席エアバッグ前は不可。
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温度管理:直射回避、サンシェード・遮熱シート併用。車内放置は数分でも危険。
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走行:急加速・急制動を避け、2時間ごとに換気と水分補給。
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音:大音量の音楽は避け、穏やかな環境音に。
鉄道・機内持込(小型)
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完全収納:座席下に収まるサイズ・柔らかすぎないソフトキャリア。
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遮光と匂い:上部にタオルで視覚刺激を減らし、自宅の匂いで安心を維持。
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取り出し禁止:移動中の取り出しは原則不可。ハーネス二重化で万一の脱走にも備える。
航空貨物(手荷物不可サイズ)
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季節選び:猛暑・厳寒はリスク増。出発時刻を朝夕に、受託停止(エンバーゴ)時期は迂回計画。
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短頭系統:呼吸リスク。原則回避し、やむを得ない場合は獣医評価と最新規程の確認。
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鎮静:原則非推奨(呼吸抑制・転倒)。必要時は獣医処方・事前試験・記録が必須。
5|“行動と健康”の実務
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フェロモン製品:搬送30分前にキャリア内へ。過鎮静の代わりに不安低減。
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馴化のコツ:
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クレート=“ご褒美が出る場所”に変換
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短時間×高頻度で扉閉鎖に慣らす
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走行音・振動のペアリング
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投薬:酔い止め・抗不安は獣医師の指示で事前試験(本番ぶっつけはNG)。
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給餌・給水:長距離は少量・高消化性のおやつを。水はこぼさない形式で。
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トイレ:長距離ドライブ時はコンパクト簡易トイレや厚手シーツで代替。
6|多頭・年齢・特別なケース
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多頭:原則別クレート。相性が良くても輸送ストレスで咬傷が起きやすい。
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子猫:体温調節が未熟。保温材を外側から(低温やけど回避)。
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高齢・持病(腎心疾患・てんかん等):区間分割+受入側の受診先リストを事前共有。
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妊娠・授乳:原則避ける。やむを得ない場合は獣医の適否判断を。
7|国際移動の注意(国内にも応用できる段取り)
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要件の二重確認:出国国と入国国の双方で、マイクロチップ・狂犬病ワクチン・抗体価・検疫予約の最新条件を照合。
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締切地獄を回避:健康証明の有効日数・検査から待機期間などは国により厳格。逆算ガントチャートを作る。
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トランジット:乗継国にも独自要件があることがある。
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書類運用:原本1+コピー2(クレート外ポケット/手荷物)。紛失に備えクラウド保存。
8|温度・騒音・振動の“可視化”
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温湿度計:クレート付近に小型を設置(運転席から視認)。
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データロガー:長距離では温度・衝撃を記録して到着後の評価と改善に活用。
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GPS共有:輸送会社に依頼しETA共有があると受入準備が正確に。
9|緊急時(EAP:Emergency Action Plan)
想定すべきシナリオ
初動の原則
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猫の安全確保(騒音から離す・遮光・保温/保冷)
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医療判断(獣医へ連絡、症状・体温・呼吸数を伝える)
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代替ルート(迂回・待機場所・臨時宿泊)
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記録(時刻・環境・写真)—次回改善の素材になる
10|到着後48時間のケア
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静寂の“セーフルーム”:トイレ・水・寝床を1室にセットし、来客や大音量は避ける。
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水→少量→通常食の順で戻す。急な大盛りは下痢や嘔吐の原因。
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行動観察:呼吸数、瞳孔、被毛の艶、食欲、排尿(尿が出ない=緊急)、嘔吐。
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匂いのブリッジ:旧居のブランケットを1週間残すと環境適応が早い。
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登録更新:マイクロチップ情報、自治体登録、迷子札の住所。
11|“やりがちミス”と即対策
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ギリギリサイズのクレート → 立てない・向き変えられない=パニック。余裕寸法で。
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満腹で出発 → 嘔吐・誤嚥。少量か時間調整。
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車内放置 → 夏冬は数分で危険域。絶対NG。
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鎮静で“寝かせればOK” → 呼吸抑制・体温低下リスク。獣医判断・事前試験必須。
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口頭引継ぎのみ → 情報抜け。紙のチェックリストと連絡先カードをクレート外に。
12|現場で使えるチェックリスト(印刷推奨)
計画:
☐ ルートと時間帯/代替案 ☐ 受入側の準備(セーフルーム)
☐ 健康チェック・常備薬 ☐ マイクロチップ・書類
クレート:
☐ サイズ余裕 ☐ 金属ドア・ボルト ☐ 通気+遮光
☐ 吸水床材 二重 ☐ 固定できる水器/給水ジェル ☐ ラベル一式
慣らし:
☐ クレート内給餌 ☐ 扉閉→時間延長 ☐ 試走・音振動馴化
当日:
☐ 食餌タイミング ☐ 爪切り ☐ フェロモン ☐ 早めの受付
☐ ハーネス二重・名札 ☐ 書類原本+コピー
輸送中:
☐ 2時間ごとに換気・水分 ☐ 温湿度チェック ☐ 異常時の連絡先
到着後:
☐ セーフルーム準備 ☐ 水→少量食 ☐ 行動観察(排尿確認)
☐ 登録情報更新
13|SOP(社内標準手順)ひな形アウトライン
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目的・適用範囲(猫の国内/国際輸送)
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用語(セーフルーム、ETA、エンバーゴ等)
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役割(飼い主/輸送担当/獣医/受入側)
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事前評価(健康・気温・ルート・書類)
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クレート仕様・個体ごとの設定
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馴化プロトコル(4週間テンプレ)
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当日手順(チェックイン、固定、記録様式)
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モニタリング(温湿度・衝撃・点検頻度)
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緊急対応(症状別フロー、連絡網)
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到着後評価(48h観察、是正・再発防止)
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記録保管・年次レビュー